製品・ソリューション

お客様との新たな価値創造 ビール泡立ち缶用塗料の開発秘話

アサヒビール社との協業イメージ
トーヨーケムの製缶塗料は、缶ビー ルの内面塗料として古くから国内トップシェアの実績があります。
2021年、アサヒビール(株)から発売された生ジョッキ缶の”泡の出る缶”の開発に、トーヨーケム(株)とアサヒビール社で取り組みました。
缶ビールのフタを開けただけできめ細やかな泡が立ち、どこでもお店で飲むような美味しい生ジョッキビールの感動を味わうことができる商品として、大きな話題を呼んだ「生ジョッキ缶」。
実現のカギとなった技術で、アサヒビール社と共にこれまでの常識に挑戦し、共同開発した当社の製缶塗料「ビール泡立ち缶用塗料」、その仕組みをご紹介します。

ビール泡立ち缶用塗料は実は失敗作だった?!

缶ビールの内面塗料は内容物(ビール)をおいしく飲むために使われており、缶ビールを開けた時に吹きこぼれないことが常識でした。 それにもかかわらずある時当社が開発した塗料は大きく吹きこぼれてしまい、業界の常識としてはまるで使えない失敗品でした。

塗料の役割①:腐食防止

内容物(ビール)から缶を守る

塗料の役割②:おいしさキープ

缶の金属成分が内容物(ビール)に溶け出し、風味が変化することを防ぐ

常識:缶を開けた時、ビールが泡立つ(噴き出す)ことは許されない 

泡立つ=消費者の衣服や住居を汚してしまう不良品

大失敗

通常のビール用塗料の開発時、ある特殊な材料を使用したところ、ビール缶用塗料では許されないビールの泡立ちが発生(失敗)

ビール充填、開缶テスト(開缶直後)

通常塗料を塗装した缶

通常塗料を塗装した缶

失敗塗料を塗装した缶

失敗塗料を塗装した缶

お客様との共創による新たな価値創造

今までの常識にとらわれない、新しい缶ビールを作りたいというお客様の思いと、当社の技術知見が組み合わさり、新しい価値を創造することにつながりました。

お客様との協業イメージ
蓄積した
製缶塗料技術
  • 内容物から缶を守る
  • 缶の金属成分による内容物の風味への影響を防ぐ

アサヒビール社との
パートナーシップ
  • これまでの常識とは正反対の発想
  • 特殊設計で泡立ちを最適化する製缶塗料を開発

過去の失敗を価値に転換=新たな価値の創造

ビール泡立ち缶用塗料による泡立ちの秘密

特殊な材料を使用したことで缶の内面に特徴的な凹凸ができます。
フタを開けたときの内圧開放による自然発泡が、この凹凸構造部によって増幅され、 ビールの泡立ちに関係することをアサヒビール社との研究・開発の結果、発見しました。

①共焦点レーザー顕微鏡観察画像

通常塗料を塗装した缶内面

通常塗料を塗装した缶内面

泡立ち缶用塗料を塗装した缶内面

泡立ち缶用塗料を塗装した缶内面

②電子顕微鏡観察画像

クレーター状の凹凸ができていることが観察できます。

アサヒスーパードライ通常缶の内面

アサヒスーパードライ通常缶の内面

アサヒスーパードライ「生ジョッキ缶」の内面

アサヒスーパードライ「生ジョッキ缶」の内面

③ビールが泡立つ想定メカニズム

ビールが泡立つ想定メカニズムイメージ

ビール泡立ちテスト

塗装した金属板をビールに浸漬した際の泡立ちの比較

表面改質技術を使用した成型加工対応 高密着金属塗料製品を見る

お客様との共創

お客様の声

アサヒビール(株)パッケージング技術研究所 黒田隆平様(右)、中島宏章様(左)
アサヒビール(株)パッケージング技術研究所 黒田隆平様(右)、中島宏章様(左)
─今回の「ビール泡立ち缶用塗料」のご提供にあたり、開発に携わられたアサヒビール(株)パッケージング技術研究所の黒田隆平様と中島宏章様にお話を伺いました。
 本来、飲料缶の開発は製缶メーカーさんとの2社で行われ、
内面塗料については製缶メーカーさん経由で間接的に関わっていただくのが通常なので、今回のように塗料メーカーであるトーヨーケムさんと直接開発をしたのは異例中の異例でした。
さまざまな偶然が重なった共同開発でしたが、思い返せば非常に実りあるプロジェクトだったと感じます。
 トーヨーケムさんはとにかくレスポンスが早く、実機テスト直前の改良依頼にも快く応じてくださいましたし、科学的知見も豊富で、本当に充実した技術交流となりました。
 内容物である飲料と、容器であるアルミ缶を進化させていくという2つのアプローチによって、「期待を超えるおいしさ」をお客様にお届けしてきた私たちアサヒビールは、今回の生ジョッキ缶開発を通じて、内面塗料という新たなアプローチの手段を獲得しました。今後もこのパートナーシップを磨いていくことで、さらなる「うまい!」をお届けしたいと思います。

おわりに

当社は長年の製品づくりの中で、上手くいったことも、いかなかったことも、そのひとつひとつを真剣に受け止め、技術の蓄積をしてきました。今回、異なる視点を持ったお客様のご要望に真摯に向き合い、これまでに無い価値を生み出すことができました。今後とも、お客様との共創を通じて、世界の人びとの生活を豊かにする新たな価値を提供していきます。

(2022年7月の当社グループ発行統合レポートより、抜粋、再編成)

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トーヨーケム株式会社 包装・工業材営業本部 営業1部

トーヨーケム株式会社